野狐禅/早川義夫 ■野狐禅弾き語り対決ツアー 「塊オンザフォーク」■
2004.10.21(THU)/KRAPS HALL
【僕、もう負けないーー!!】
先日の「がんばれ北海道人ライブ」に引き続き、全席イス!で、入った途端に「えっ?!」と嗚咽してしまう場内。
余裕で間に合う筈だったのに、慌てて駆けつけ、ドリンクカウンターで「ビール」と言ったらすぐに客電落ちた。
座席の上に置いてある「WE!」が、空いているのか席についてる人が立っているだけなのかわからなくて、
PAの前にある小さい出っ張りに腰掛けて、ステージの方を向いたら早川氏が既に歌い始めていた。
名前は知っていた。
しかし、曲はというと、先日スカパーで放送された「ライジングサン・ロックフェスティバル イン エゾ 2004」を見てたら放送されてて
「あっ、早川氏。こういう人だったのかー」と思ったのがファーストタッチ。
その時に聞いた「サルビアの赤い花びらを君のベッドに散りばめて〜」といったような曲も今日演奏されてました。
なんだか、とっても「ポルノ」な感じ。ピンクの照明だし。とにかくえらくまぁ、生々しいんですよね。詩が。特に。
最初は、とめどなく次々と放出されるその世界にポカーンな感じだったんですが、クセになる気持ちもわかってくるような。これってマジック。
そして全編通して、小説に曲つけて歌ってるみたいな印象。
「お父さん、温泉行こうよ」という歌の間だけが、ちょっとホッとする瞬間でしたが。
歌っているときは、時々上下に体を揺らしながら、声を捻り出すように繰り出される詩の世界に圧倒されてしまうのですが、
ピアノだけになると、これがなんとまぁ美しい調べ。
この音色と詩のギャップは何なんだ!と驚愕。
「対バンとかイベントって、自分のチョイスで見てたらまず出会わないだろう音楽に触れられるから本当に面白いんだよなー」との実感のうちに終了。
野狐禅登場。
竹原君がピッカピカで赤く美しいギターを持ってる姿にちょっと違和感&寂しい気持ち。
あの、ひっかき傷がいっぱいの、線だらけのギターが見たいなーと思っていたら、案外後の早い段階で登場するんですけども。
まだ彼らに出会って2年ちょっとなワケですが、もう竹原君の歌うスタイルが変わってきているなーと気付いた。
もっと前傾でギターの位置低かったよね?まぁ、あの姿勢でワンマン続けてると、間違いなく腰痛発症でしょうが。未然に防ぎました。
気を抜いたら飛び掛ってきそうだった姿勢が、今は「唄ってる」姿勢に見えた。
野狐禅のライブを、顔や汗やほとばしる生気までをもゆったり見るのはとても久しぶりな気がして、とても体中に染み入った。
前回は例の伝説の(自分内)ライジングサンのグリーンオアシスで、その前は超ギッシリで、ちょっと居心地悪かったベッシー。
竹原君のギターに柔らかく流れ入るイメージが強かった濱埜くんがとても激しくなっていた。
頭を強く上下に振り、ピアノの音も曲にガツンガツンと当たっていってた。緩急がスゴイ。
3曲ほど弾いたところで赤くピカピカのギターの弦が飛び散った。
すぐ後ろに1本だけ置いてあるギターを手に取った。あの、ボロボロのギターだった。
そんなところまで何故にひっかき傷がつくの?というところにまで満遍なく何万もの傷のついたギター。
塗装がはがれ、生木の白い色の方が多く出ているようにすら見える。このギター大好き。
「応援ソングを歌ってるつもりだと言ってました、彼らは。・・・自分らのことなんすけどね」と言ってた。
そっか。応援ソングだったのか。
「通学範囲内の生活ソング」だと思ってたよ。失礼かしら。
自分の部屋の中、自転車で行ける君の部屋、近くの公園、せめて最寄の駅までの生活の中で思い、笑い、泣き、苦しみ、もがいてきた歌。
しかし、なんなのだろうと、常に思う。
応援されてる実感は無い、歌っている彼のことをそう知ってるワケでもない、なのに歌を聞くと心が共鳴して涙が出る程震えるというのは。
理由なんて知らなくていいし、無くていいんだけれども。
でもともかく、此処にもそういう歌が存在し、私はこの歌を必要としている。これが何より一番大切なことだ。
「金属バットが聞きたいなー」と思っていたら、次が「金属バット」だった。
「自殺志願者が線路に飛び込むスピード」や、この「金属バット」が放送禁止になったと言っていたのに、
今では野狐禅の曲はCMソングに使われていたりする。
こうして、何の問題も無く望んで聴いている者にとってはそれこそ何の問題もないことだけれど、よく考えたらどうなんだろう。
込めた想いや思想は同じだろう。同じく強い思いで歌っているだろう。
なのに。
あれはこうで、これはこうで、というのは。何がどうだって言うんだ。
「ならば友よ」
ライジングサンで聴いた。
夢という言葉は諦めた人が発明したんだろう、青春という言葉は通り過ぎた人が発明したんだろう。
ならば友よ、君と語り合うのは死ぬ間際でいいや。
きっと、死ぬ間際でも語らないだろう、この人は。
語らないでもお互い頷きあって終わるんだろう。
2度目に切れたボロボロギターを置いて弦を張り替えられた赤いギターに持ち直す。
スタッフは、置かれたギターの弦を張り替えようとしない。
心の中で「張り替えて!早く!」と叫ぶが置かれたまま。
昔、私がバドミントン部のマネージャーをしていた時のある大会で、ラケットのガットが次々切れ、先を読んで何度張り替えても次々切れる。
あの時の光景がオーバーラップしていた。
早く張り替えて!
「ぐるぐる」。
これもライジングサンで聴いた。ギターを置いて、手ぶらで歌っていた。ちょっと驚く瞬間だった。
今日も、3度目に弦が切れたギターを下げたままの竹原君に、スタッフが直前に弦を張り替え終わったギターの交換を軽く促したが
「いや、大丈夫」と手で合図をして、濱埜くんのピアノだけで歌った。
「涙がこぼれそうになったらガムテープで顔面をぐるぐるにしてください」
今、手元にガムテープなんて無いよ!どうすればいいんだよ!!
涙は感情の墓場だぜ 歌は感情の墓場だぜ
涙と歌は感情の行き着く先だ。そこから先はない。いい歌だ。
臆病な情熱は捨てると決めたんだ、という歌もこれまたたまらなかった。
僕、もう負けない!
何と言う曲かはわからない。
最後に、竹原君が濱埜くんをニヤニヤと企んだ悪い顔で何かを催促してるなーと思ったら、濱埜くんに「初恋」を歌わせた。
歌詞が全然繋がってないぞ!私の方が歌えたぞ!
こんな光景の一つをとっても、彼らがどれだけお互いを大好きかってことが溢れんばかりに充満してる。
見せ付けたいのか(笑)?
今日もいいものを見た。
あーー、楽しみだ、次のライブ。