怒髪天 / BRAHMAN
2002.6.7(FRI)/京都ミューズホール 【ミタケオアシン】
この日を迎える前から「味方が少ないからな〜」と言っていた増子さん。
ここまでの戦いの日になると思っていたのだろうか。
怒髪天vsブラフマン。
着用Tシャツから見て、怒髪天/ブラフの割合は半々というところ。
どちらが先なのか微妙に掴みづらい状況で、ライブハウスでは珍しい、緞帳が下がるステージ前に怒髪天ファンが陣取る。
その後ろに余裕で座り込んで待つブラフファン。これだけでも力の入り具合の温度差が伺える。
緞帳が開く。ブラフマンのボーカル他が既に立ち、それと同時に演奏を始める。
ホールに溢れていた男子がほとんどブラフにつき前へ押し寄せた。ものすごい勢い。
ボーカルが登場する。頭にタオルを被り、ボクサーのよう。彼もまた、戦おうとしているというのか。
以前、PVがスペースシャワーのヘヴィーローテーションで流れてた頃しか知らなかったが、その時はあくまでも、
あまりに繊細で、壊れてしまいそうな程に脆い、内に内に向かう精神がある時爆発したかのような破壊性、という印象だった。
ところが、いきなり壮絶なまでのデストロイ。すごい動き。かっこいい。歌上手い。
昔、ストリートスライダーズについて当時のレコード会社の人が「まったく大変な奴らを抱え込んだもんだ」と言っていたという話を何気に思い出していた。
ダイバーもものすごい数。そりゃそうだろう。
「勢い」vs「底力」。
いよいよの怒髪天。ブラフファンが下がってくるのと同時に前へ食い込む。
やった!真ん中か?!と喜び後ろを振り返ったところ、あれ?思ってたより人少な目。
これで殊更、増子さんの闘志の火にガソリンが注がれたのだろうか。
底力を蓄えまくった腹から放つズ太い爆発砲、油がしたたる程にギラリと光る刃(やいば)のような鈍重な鋭さ、
そのヤバさを惜しみなく戦いの力へ変えていくのか。スゴイことになるぞ。
怒髪天でないと味わえないその味を、若者達よ、目ン玉ひん剥いてよく見ておくがいい。
胸切り開いて魂を直接磨きかけるがいい。
さぁ、どうだ、足を肩幅に開いてちゃんと踏みしめろ。受け止める準備はいいか?
MC「サムライじょんがら」(今命名・笑)が流れ、再び緞帳が開く。
メンバーみんなが「コマネチ」かなんかのポーズして立ってたらどうしようかと思った。マジで。
しかし、いつも通りにメンバー登場。最後にゆっくり増子さんが登場し、斜に立ちポーズを決め、櫛で髪を整える。
「酒燃料爆進曲」「明日をブン殴れ」
久しぶりに自分の胸の前にモニターがあり、増子さんが乗せたり蹴ったりする足の力に負けじと頑張ると、どうしても前へ前へ押しつけてしまう。
「ブラフマン、ハンサムだって聞いてたけどあそこまでハンサムだとは思わなかった」って増子さん、
私には怒髪天はハンサムにしか見えないけどなぁ。
いい顔、ハンサム、男前、私の中にあるこの言葉達は全て、あなた達のために捧げましょうぞ。
「宿六小唄」。新アルバム「武蔵野犬式」に収録される曲だ。初めて全貌を聴いた。またいい曲が生まれた。
「今日のことすらできない男に どうして明日が見えてこようか
自分のこともできない俺に おまえの涙を拭えるはずあるもんか」
印象的でなおかつ何度も唄われるこの部分、何とかしてこの場で憶えて一緒に唄いたかった。
最後の方でようやく、一字一句違うことなく唄うことができた。
「こういう曲だったんだ・・・。」終わった後、こんな言葉がついて出た。「この曲にやっと出逢えた」そんな想いが確かに存在していた。
「夕暮れ男道」「NINKYOU−BEAT」。
聴く度にどんどんタイトに、どんどんデンジャラスに感じるこの曲。
ステージから思い切り身を乗り出して叫ぶ増子さん。
チューするか電報ゲームかぐらいじゃないと近づかないだろう距離にある増子さんの顔が、赤いライトで陰影無く真っ赤に染まる。
あまりに綺麗な写真のようで見とれてしまった。こんな激しい曲の最中なのに。
赤の似合う人だなーーーと改めて。情熱の赤。
「痛し痒し。」小さくつぶやいた。すごく歯がゆく感じてるんだろう。
どうやったら届くのだろう、どう戦っていこうかと。
「ナラクデサカバ」。
途中、親指で小さく首をかき切る仕草を見た気がした。客席に向かってではなく、曲の途中でうつむきながら。
なかなか受け入れない客に対してだろうか。届けられない、戦いきれてない自分に対してだろうか。
後者だろう。戦う男達なのだから。
「京都で東京の唄を唄うのもどうかと思いますが。」と、「杉並浮浪雲」。
そして「サムライブルー」。全身全霊を振り絞り、胸を切り開いて何度も何度も魂を放出する仕草を繰り返す。
今日着てきた私のサムライブルーTシャツの背中の文字は、曲を得て輝いているだろうか。
後ろの人々に、この背中もまた魂を放出しているだろうか。この言葉よ届け、想いよ届けと。
そしてすべてを包み込んで「サスパズレ」。
これも「武蔵野犬式」に収録される曲なのだが、まだ発売前にも関わらず超人気で、既にこの位置が定着してしまっている噂の曲だ。
「<サスパズレ>っていうのは東北の方言で<ものさしはずれ>っていう意味なんだけど」
その説明を聞いて一同「へぇ〜。」みんな素直だね。かく言う私も思いっきり頷いてた方(笑)。
「ラーララーラーラーラララーラーララーラララー!!」
両手を挙げて手を広げて左右に振る。
拳以外で手を上げるなんてちょっと恥ずかしかったけど不思議にすぐ慣れた。
心の底から楽しそうに自分最大の大声で歌うみんなと、それに負けずに楽しそうに笑顔満面で歌うメンバー。
最近は常に、噛み付きそうな顔で前へ前へ挑んでるからこんなに無邪気に歌う顔を見るのは実に久しぶり。
「近頃は小綺麗になった風だけど、この顔、何も変わっちゃいないな。」とニヤリとしてしまった。
「へんてこメロディ〜〜!!」のコーラス、メロディも歌い方も実はとてもパンク風味が利いててものすごくカッコイイ。
「もう一回!」「まだあるぞ」と繰り返される、その都度ほんのちょっとずつ早くなってる「ような気がする」最初のギターリフも、ものすごい見せ場。
「ラーララーラーラーラララーラーララーラララー!!」
場内大満足。
しかし、怒髪天の戦いはまだ続いていた。「愛の嵐」。
「届け!」「届け!」と言っていた。聞こえた。言葉が見えた。
そしてその戦いは「美学」でクライマックスを迎える。
前の方に陣取る怒髪天ファンへじゃない、後ろの人々へ挑む戦い。
増子さんが客席へダイブをするのは、よくある、客が盛り上がってするそれとは全く違う。
後ろの人へ「届け!届け!!届けーーーー!!!」と、その強い気持ちを前へ前へと押し出している魂に身体が引っ張られてしまい、
結果、ステージから飛び出してしまうのだ。
オーバーじゃなく、見えたのだ。増子さんから飛び出し、身体を引っ張る魂が。
そして「美学」では、遂に私の後ろにもはっきりと人が狂喜乱舞する感じを背中で感じ取っていた。
アンコールで「情熱のストレート」。
さっきの勢いは更に続いた。
怒髪天が最後に放った情熱のストレートという火の玉パンチは、今日の戦いを間違いなく勝利に持ち込んだと言っていい。
決して楽な戦いではなかったけれど。
もちろん私達には届いていて、何人もの身体を貫き串刺しにして後ろへ到達したことになるが。
帰り際、出口に向かう人達が口々に「怒髪天カッコ良かったなぁ。」などと興奮気味に語り合っていたことが何よりの証拠だ。
怒髪天のライブは何度も見ているが、こういう気持ちでこんなに感慨深く見たのは初めてかもしれなかった。
いつもは「受けて立ってる」感じ。ところが今日は「一緒に戦ってる」感じ。
「怒髪天は戦ってるんだ」ということを、一層強く魂と身体で勝手に共感してしまった。
歯がゆさやちょっとのせつなさや奮い立つ志気まで。
さぁ!!一緒に戦うぞ〜〜〜!!
なんつって、すぐにまた私がノックアウトされたりするんだよな(笑)。
さぁ、明日は神戸のオールナイト。どんな戦いになるんだろうか。